2025年4月17日
戸建てかマンションか迷っている人の中には、地震に強いのがどちらか気になっているという方も少なくないと思います。
主に木造で作られている戸建ては、「木よりも鉄の方が強い」という印象から地震に弱いと勘違いされがちですが、結論から言うと過去発生した地震の被害状況や法律で定められた耐震基準から、「戸建てだから地震に弱い、マンションだから強い」というよりも個々の物件の耐震基準や耐震等級によって地震への強さは変わります。
過去の震災の倒壊率からは家の構造や建築年代などによる耐震性の違いが見受けられましたが、戸建てとマンションどちらの耐震性が高いかは一概に言えません。
倒壊に関する報告資料からは、戸建てかマンションかの違いよりも、耐震基準・耐震等級・建物構造によって建物の耐震性が異なってくるということが読み取れます。
建築基準法で定められている耐震基準は、これまで大きな震災を経て2度改定されています。
旧耐震基準・新耐震基準・2000年基準の違いを見て行きましょう。
・旧耐震基準
1950年の施行から1981年5月31日以前に確認申請が受理された建物に適用されている耐震基準を指します。震度5強程度の揺れでも建物が倒壊せず、補修すれば生活できることを基準としています。
・新耐震基準
1981年6月1日以降に確認申請が受理された建物に適用されている耐震基準です。震度5強程度までの地震ではほとんど損傷を受けないことに加え、震度6強から7程度の揺れでも倒壊せず、人命に危害を及ぼすレベルの被害が生じないことを基準としています。
改正のきっかけは、1978年に発生した宮城県沖地震です。震度5程度の揺れにより、現在の仙台市域で住宅の全半壊が4385戸、一部損壊が86010戸と想定以上の大きな被害が生じたこの地震を教訓に、今までの耐震基準が見直されました。
・2000年基準
木造建築物を対象に改正された基準です。地盤の強さに応じた基礎(建物を支えるコンクリート部分)の設計、梁(屋根や上階の床の重さを支える材木)や柱などの接合部の固定に関する規定、耐力壁(地震の横揺れのような水平方向にかかる力に耐えるための壁)の配置バランスの規定が盛り込まれました。
この基準は、阪神淡路大震災での被害によって洗い出された新耐震基準における木造の弱点を補強しています。
建物の耐震性を高める構造には「耐震構造」「制震構造」「免震構造」があります。耐震構造をベースに各構造を組み合わせることで、建物の耐震性を高めることができます。
・耐震構造
地震の揺れに対抗するため、建物自体を頑丈にする構造を指します。筋交いを入れたり、柱と土台・梁のような部材同士の接合部を金具で補強したりすることで揺れに耐えられるようにしています。
しかし、建物の揺れは直接伝わるため、揺れによる建物へのダメージは免れません。また、揺れによるダメージが限界を超えると建物の損傷や倒壊につながる恐れがあります。
・免震構造
建物と地盤との間に部材を設置することで、建物に直接揺れが伝わらないように設計されている構造を指します。大きな地震が発生しても揺れにくいのが特徴で、家具の転倒による被害も抑えられます。
しかし、設置に大きなコストが生じるうえ、定期的なメンテナンスが必要になります。戸建て住宅よりもマンションのような大規模な集合住宅で採用されています。
・制震構造
建物内に地震の揺れを吸収する部材を取り付け、揺れを小さくする構造を指します。揺れの吸収は免震構造ほどではありませんが、揺れを抑えることで建物へのダメージを少なくして損傷や倒壊を防ぎます。
設置・維持コストは免震構造と比べると安く抑えられますが、耐震構造よりは高額になります。また、間取りが制限される場合があります。
耐震性の指標の1つである耐震等級は3段階で表示され、数字が大きくなるほど耐震性が高くなります。
・耐震等級1
震度6強から7程度の揺れでも倒壊せず、震度5強程度までの地震ではほとんど損傷しない耐震性を満たすことが耐震等級1の条件。これは、新耐震基準と同等の耐震性能が備わっていることを示しています。
震度7の揺れが2回起きた熊本地震では等級1の建物の60.1%は無被害でしたが、6.3%は倒壊等の大きな被害を受けました。被害を最小限に抑えられる耐震性能を有していますが、倒壊のような人命に関わる被害を完全に無くすことはできません。
・耐震等級2
耐震等級2には、耐震等級1で想定されている1.25倍の地震力がかかっても倒壊・損傷しない耐震性能が求められており、病院や学校などの建物と同等の強度を持っています。
耐震等級1の建物が震度7の地震で倒壊する確率が28%なのに対して耐震等級2は7.9%となっており、等級を上げることで大きく倒壊率を減らせます。
・耐震等級3
耐震等級1で想定されている1.5倍の地震力がかかっても倒壊・損傷しない耐震性能が求められるのが耐震等級3です。
熊本地震では耐震等級3の建物の87.5%は無被害で、残りの12.5%は軽微な被害に抑えられていました。
耐震等級3の建物が震度7の地震で倒壊する確率は3.5%となり、耐震等級1の建物の倒壊率28%と比べて約8分の1の値に抑えられます。
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