2025年5月29日
知っているようで知らない床の間の常識。和室の上座を陣取る額縁の空間です。日本の伝統文化の賜である床の間の起源や役割など、知ると面白い住宅建築豆知識。和の心を感じる「床の間」、その魅力をぜひ日常にも取り入れてみてください。
床の間とは、和室の壁面に設けられた周囲の畳よりも一段高くなっているスペースのことを指します。
室町時代に「押板(おしいた)」と呼ばれる板の上に、つぼなどの美術品を飾ることが流行し、さらに安土・桃山~江戸時代初期にかけては、身分が高い人の座る場所を高くする「上段の間」という考えが定着していきました。この「押板」と「上段の間」が次第に同化し、「床の間」になったといわれています。
「床」には寝る場所という意味がありますが、昔は一段高くなった場所を「床」と呼んでいたという説もあります。
床の間は「床を持つ部屋」というのが本来の意味ですが、和室では床の間に一番近い位置が上座という神聖なイメージがあります。これは、上段の間のような昔の風習が関係しているといえます。
床の間でやってはいけないタブー
床の間は神聖な場所とされているため、やってはいけないタブーがいくつかあります。それらを知っておくことで、床の間がある和室に招かれた時も粗相することもないでしょう。
床の間には神様がいる場所と考えられているため、上に乗ったり足で踏むことはタブーです。床の間がある和室で座ったり寝たりすることは問題ありませんが、床の間に上がってはいけません。
床の間には薄い板が床として使われていることがあるため、重いものを置くと割れてしまうこともあります。床の間を飾り付ける時は、床を傷付けないように慎重に取り扱いましょう。
床の間は先ほどもご説明したとおり、神様がいる場所とされています。そのため、雑多に荷物を置くことは避けましょう。床の間は荷物を置くのではなく、おもてなしをするための掛け軸や生け花を飾る場所です。
床の間はお客様をもてなすための飾り付けをする場所なので、人によって好き嫌いがわかれるような装飾は避けてください。自分がよいと思っても、他人から見たら嫌なものは置かないようにしましょう。
床の間に置くといいものは次の5つです。お客様をおもてなしできるような飾りを意識しましょう。
掛け軸には風景画や文字を合わせたものなど、さまざまな種類があります。基本的にどの掛け軸を選ぶかは自由なので、好みに合わせて掛け軸を選びましょう。「山水」などの風景画をはじめ、季節に合わせた「四季花」、魔除けの「龍虎」などの掛け軸が主流ですが、最近ではアニメのキャラクターが描かれた掛け軸などもあります。
干支に関する置物はとても縁起がよいとされています。その年の干支にまつわるものを置けば家内安全、自分の生まれ年の干支にまつわるものは無病息災につながるといわれています。最近は干支をモチーフにしたかわいらしい置物もありますので、選んでみましょう。
床の間の向きに合わせて生け花の色を選ぶと、より運気が上がりやすくなります。方位ごとのおすすめの色は次のとおりです。
床の間に生け花ではなく、観葉植物を飾るという方法もあります。掛け軸を一緒に飾るのであれば背の低い観葉植物を、観葉植物のみを飾るのであれば背が高く見栄えがするものを選ぶとよいでしょう。床の間一面に観葉植物を飾るのではなく、少し余白を残した状態で観葉植物を飾るとおしゃれに見えます。
盛り塩とは、皿の上に塩を山のように盛ったものです。悪い運気を取り除く効果があると考えられています。結界を張るという意味で玄関に置かれることが多いですが、床の間も神聖な場所として盛り塩を置く場所に適しています。
盛り塩には、粗塩などの加工が少ない天然の塩を使います。盛り塩は霧吹きなどで水を少量ずつかけながら固めることもできますが、ホームセンターやネット通販で簡単に盛り塩を作れるキットも販売されています。盛り塩を床の間に設置する前に念入りに掃除をし、盛り塩は月に2回ほどのペースで取り替えるようにしましょう。盛り塩は一定の期間で悪い運気を吸収しきるため、飾ったまま放置することはあまり運気によくありません。
一方で、床の間に置くと悪いものもあります。2つご紹介しますので、現在床の間に置いている場合は場所を変更することをおすすめします。
床の間にひな人形や五月人形などの縁起物を置くのは問題ありませんが、ぬいぐるみや人形などはおすすめできません。ぬいぐるみや人形は運気を吸収するといわれていて、床の間に集まるよい運気も吸い取ってしまうため、床の間に置くことはよくないとされています。
家電製品は磁場を発生させるため、床の間にある神聖な運気を逃がしてしまいます。そのため、家電製品は床の間に置かないほうがよいとされています。扇風機やストーブなど季節家電を一時的に保管する場所にしがちですが、運気を上げるためには床の間に置くことはおすすめできません。
その他、収納しきれない荷物を床の間に置いている場合は、部屋の収納を工夫したりモノを減らしたりするなどの対策をおこない、床の間に置いておくことはやめましょう。
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